中小気象が事業の承継やM&Aを考えるときに、譲り渡す側の社長が最も気にするのが「従業員の雇用」でしょう。
先日お会いした社長さんは、「M&Aは結局従業員を売ることだ。だから自分はM&Aはやらないことにした。」と言っていました。
だから、社内で後継者を育てる。
このような考え方も一つあり得ることです。
さて、社外の人物に事業譲渡する場合には、従業員を引き継ぎます。
むしろ従業員のもつスキルこそが中小企業におけるM&Aの一番の目的になります。
他方で、譲り渡す側は、一緒に働いてきた従業員が変わらず雇用されることを望み、譲り受ける側は、キーパーソンは欲しいがそうでない人物は自由に選択できるようにしておきたい。
そんな対立のある場面でもあります。
契約書には、両者の協議してきた形が反映されることになりますが、それまでの経緯をきちんと文言化していくことが大切です。
〇引き継ぐ従業員は誰か
〇労働条件は継続か、新しく考えるのか
〇退職金算定の基礎になる勤務期間は引き継ぐかゼロスタートか
〇福利厚生の制度はどうするのか
この点は、譲り渡す側において「ここだけは守って欲しい」というところをはっきりさせ、他方で、譲り受ける側は元からいる従業員との公平を考慮して「できることとできないこと」を明確にすることが必要となります。
腹を割って協議できることが、従業員を守ることになるということでしょう。