弁護士の介入と直接交渉

弁護士に事件を依頼すると、その弁護士は「○○代理人弁護士□□」となります。

代理人ということは、本人に代わって相手方と交渉したり、結論を決めたりする権限を持つということです。
弁護士特有の仕事は、法律問題に関する代理人になれるということです。

弁護士法3条1項
弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。


さて、代理人になれるということは、本人に代わって働くということですが、相手方にも「これからは私に連絡をください。本人に連絡をするのはやめてください」と通知することはよくあります。

ただ、これに従う法的な義務があるかというとそうでもありません。
相手方にも弁護士がついていれば、その弁護士はこちら側の依頼者に直接連絡とってはならないという決まりごとはあります。


弁護士職務基本規程52条
(相手方本人との直接交渉)
弁護士は、相手方に法令上の資格を有する代理人が選任されたときは、正当な理由なく、その代理人の承諾を得ないで直接 相手方と交渉してはならない。


弁護士が、相手方の弁護士を乗り越えて本人に連絡を取ったりすると、懲戒を受けることもあります。

じゃあ、相手に弁護士いないとなると、そこは本来的には拘束できません。
例外的に、貸金業者には規制があります。

貸金業法21条1項9号
債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法 人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。

なので、相手がサラ金などならまだしも、一般の方などだと、直接の連絡は法的には止められないことになります。

ただし、弁護士がついたのにも関わらず本人に連絡を取ろうとする場合は、本人に圧力をかけていというような意味合いがあることが多いと思います。
そうなれば、
①民事的に接近禁止の仮処分を裁判所に求める
②刑法条の脅迫罪や恐喝罪に当たり得るとして警察に相談する
といったことも考えられます。
①はヘイトスピーチが問題となった際にも、使われていましたね。


相手にプレッシャーをかけようとしている場合は速やかに手を引くことを考えなければいけませんし、接触を求められている側の方は「自分に弱みなどない」と思ってどんどん外部の警察や弁護士に相談に行くことです。